2015年8月12日(水):曇りときどき晴れ:五頭山一ノ峰→五ノ峰→三ツ俣→烏帽子岩→見晴台→砂郷沢橋→出湯温泉→清廣館
■ (新潟の温泉・霊場巡り その六からのつづき)五頭山一ノ峰頂上で展望を楽しんだあとは、五ノ峰まで戻ってそこで軽く昼食をとることにする。
われわれが一ノ峰頂上に着いてからずっと貸切状態だったが、出発するときに親子がやって来て、龍神の鐘を鳴らしていた。
頂上部が広い五ノ峰まで戻り、新潟平野を眺めながら軽く昼食をとる。今回は半ば山を諦めていたので大したものは持参していないが、ソーセージ、チーズ、クラッカー、バナナ、ミックスフルーツの缶詰で腹を満たす。
下りは登りと同じコースを戻る。ブナ林が変化に富んでいて、見入ってしまうため歩くスピードが遅くなる。
三ツ俣付近から空を見上げる。雲が湧き上がり、かたちを変えながら流れていく。
五合目の烏帽子岩まで戻ってくる。ここには水場の道標があるので、味見をしようと沢に下りる道に入るが、すぐに生水では飲めないという注意書きが目に入ったのでやめた。
七曲の急登を過ぎ、スギの樹林を進む。登山口はもうすぐそこだ。
朝、タクシーを降りた砂郷沢橋まで戻り、やまびこ通りの車道を出湯温泉に向かって下っていく。駐車場を過ぎた先に出湯温泉街への近道を示す道標があった。ここを行けば出湯の交差点まで戻らなくてすむ。(以下、地図の下につづく)
温泉街への近道の両側は竹林になっていて、その先に人家が見えてくる。
大きな通りに出ると、バス停の隣に案内板がたっているので清廣館の場所を確認する。温泉街の奥まったところに華報寺があり、清廣館はそのすぐそばにあった。
案内板から清廣館に向かう途中にある共同浴場。出湯温泉には3つの外湯がある。ひとつはこの共同浴場。それから同じくこの通り沿いにある弘法の足湯。そして華報寺の境内にある長い歴史を持つ華報寺共同浴場。
先述した交通機関の問題で山に登る時間が作れなかったら、外湯巡りをしようかとも思っていた。ちなみに弘法の足湯は寄ろうとしたが、お盆休みのためか閉まっていた。
清廣館に到着。出湯温泉を目的地にしたのは、五頭山の登山口があること、この土地が華報寺を中心に山岳信仰や修験道と結びついた歴史を持っていること、そしてこの清廣館に興味をそそられたからだ。この風情のある木造3階建ての建物を写真で見て、泊まってみたいと思った。
清廣館の公式サイトによれば、宝永4年(1707年)にはすでに宿屋を営んでいたという。現在の建物は昭和3年に竣工。部屋については以下のように紹介されている。
「宮大工が腕を競い合いながら丹精込めて造ったお部屋は、それぞれに異なった意匠を施しています。
厚手のケヤキ一枚の床の間。凝ったデザインの書院。クサマキの雨戸。五葉松の手すりに細やかな柾目の長押」
玄関を入ると、ロビーはモダンな空間にリフォームされている。若女将に3階の和室に案内される。窓からは、宿の建物、華報寺や寺の共同浴場、背後の山などが眺められ、のんびりと落ち着ける。
といいつつ、ひと休みしたら若女将に尋ねてみなければならないことがあった。明日の目的地は、五泉市蛭野にある古刹・慈光寺。筆者が調べた限りでは、公共交通機関を使うとなると出湯温泉からバスで羽越本線の水原駅まで行き、電車で新津駅まで行き、磐越西線に乗り換えて五泉駅まで行き、駅からバスで村松駅まで行き、そこからタクシー(約15分)を利用しなければならない。しかも、バスも電車も本数が限られているので、とんでもなく時間がかかってしまう可能性がある。では、出湯温泉からタクシーを利用したらいくらくらいかかるのか。
そんなわけで、若女将になにかよい移動手段がないか尋ねてみる。若女将がそれをお父さんに伝えてくださり、調べていただけることになった。その後、夕食の前に風呂に入ったが、それはまたあとで書くことにする。
夕食は18:00からロビーに隣接する食堂でいただく。若女将率いる女性陣が腕によりをかけた料理が並ぶ。女性たちが料理を運ぶ合間に、素材や味付けについてもいろいろ説明してくれる。地元農家の有機野菜に、女性が自分で山に入って採ってきたキノコや山菜。シンプルに見えて、素材の組み合わせや味付けにちょっとした工夫が凝らされていて、実に美味かった。焼魚などみな熱々でいただけるのも嬉しい。
その食事のときに、若女将のお父さんとお話をして、出湯温泉から慈光寺までタクシーで行こうとすれば9500円ほどかかることがわかった。さすがに月岡温泉から出湯温泉まで移動するのとは違う。ところが、そこでご主人が、急がないのであれば仕事が一段落して手が空いたところで車で送ってくれるという。なんともありがたい。もちろんタダでお世話になるつもりはさらさらないが、ひとまずお言葉に甘えることにする。
浴室は内湯が2つで、タイル張りの大浴場が女湯に、ひと回り小さい総ひのき風呂が男湯になっている。この日、風呂には2度入った。夕食の前に入ったときにはまだ明るく、開いた窓からきれいな青空を眺めながら風にあたり、露天気分で湯に浸かっていた。山から下りてきたあとでこんな湯に浸かれるのは最高である。
そして夜、10時前にもう一度入った。湯に浸かりながらはなるほどと思ったことがある。風呂には以下のような説明が書かれている。
「母なる大地からの贈り物「温泉」を未来へと守り続けるために、当館では過度に源泉を汲み上げたりは致しません。
限りある湯量の中、温泉保全・温度保温のために湯船に、薄く軽い蓋をかけております。100年後も200年後も、ずっと変わらず出湯温泉をお愉しみいただきたく、皆様にはひと手間をおかけしてしましますが、何卒ご理解のほど宜しくお願い申し上げます」
この風呂では、最初に入る人が蓋を取り、最後に上がる人が蓋をかける。温泉を限りある資源ととらえ、持続的に利用していくことはとてもいいことだと思う。
(新潟の温泉・霊場巡り その八につづく)