吹浦口に出て、湯ノ田温泉・のとや旅館へ――鳥海山に登る その五 | 楽土慢遊

吹浦口に出て、湯ノ田温泉・のとや旅館へ――鳥海山に登る その五

所在地:
[のとや旅館] 山形県飽海郡遊佐町吹浦字湯ノ田9-4
交 通:
上越新幹線新潟駅乗換羽越本線吹浦駅下車、秋田方面へ2km

2011年8月14日(日):晴れ:鳥海湖(鳥ノ海)→御浜小屋→河原宿→清水大神→見晴台→伝石坂→大平山荘駐車場→のとや旅館

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■(鳥海山に登る その四からのつづき)鳥海湖のほとりで、違和感のある腰の具合を確認し、とりあえずなんとかなりそうなので御浜小屋に向かうことに。

御浜小屋へは、湖と小屋を最短距離で結び、小屋の真下に出る道もあるが、難路のようなので、用心して回り道を選ぶ。木道をたどり、斜面を登っていく。

尾根に出て、御浜小屋方向に進む。小屋の手前からは鳥海湖、鍋森、ボサ森から月山森に連なる稜線が見渡せる。

小屋の手前から北に目をやると、また稲倉岳が見えるようになる。その向こうには平野部と日本海もよく見える。

10:30頃に御浜小屋に到着。小屋の建物のわきを通り抜け、大岩が転がる広場に出る。ここで軽く食事をとることにする。

御浜小屋からは、吹浦口コースを下る。このコースを選んだのは、登りに湯ノ台口コースを選んだのと同じ理由だ。信仰登山の時代から歩かれてきた古い登山道だということだ。

どちらのコースの場合も、その歴史を地図で確認することができる。その二で書いたように、湯ノ台口コースは横堂で蕨岡口コースと合流し、その蕨岡口コースの源をバスの路線までたどっていくと、大蕨岡にある大物忌神社の里宮に至る。信仰登山の時代にはこの里宮を起点として山頂の奥宮まで登っていたわけだ。

吹浦口コースにも同じことがいえる。地図を見ると、吹浦口コースの登山道入口は鳥海ブルーラインにあり、入口からこの国道を少し下ったところに大物忌神社中ノ宮がある。そして、さらに鳥海ブルーラインをずっと下っていくと、日本海に出る手前に大物忌神社の里宮がある。つまり、この里宮を起点として、中ノ宮を経て山頂の奥宮に参っていたわけだ。そういう道を歩きたかった。

この吹浦口コースに水場があることはわかっていたが、御浜小屋につくまでにけっこう水分補給をしていたので、また念のために小屋でドリンクを仕入れて出発。小屋の西にたつ鳥居のところで、象潟口コースと吹浦口コースに分かれる。見ているとほとんどの人が象潟口コースに向かう。われわれが吹浦口コースに入ったとたんに人の姿がなくなった。

最初は笹原の道を進む。右手には鳥居のところで分かれた象潟口コースが見える。さらにその彼方には、平野部と日本海が見える。

前方の左手には笙ヶ岳が見える。さらに愛宕坂の石畳を下っていくと、その笙ヶ岳を通る長坂道から分かれて吹浦口コースに合流する道が見えるようになる。山の大きさを感じさせる広々とした台地は歩いていて気持ちがいい。

河原宿の分岐に到着。石畳の道の分岐点に道標が立っている。われわれは左の道から下ってきた。道標には、左:御浜、右:鳥海湖、下り:吹浦口と書かれている。周辺にわずかに雪渓が残っている。

河原宿のそばには沢が流れ、水場になっている。冷たい水が気持ちよかった。沢を横切り、さらに石畳を下っていく。

登山道から海岸線と日本海の眺め。海に近いことがよくわかる。

13:00前に清水大神の湿地に到着。周辺には高山植物が目につく。ここでしばらく休憩をとる。この先、見晴台を過ぎると伝石坂と呼ばれる最後の急坂になる。この坂はさすがに歩きにくく、万全とはいえない腰に響いた。

なんとか伝石坂をクリアし、コンクリートの階段を下り、鳥海ブルーラインに出る。そこから大きく蛇行する車道を15分ほど下り、14:40頃に大平山荘の駐車場に到着。ここから宿まではコミュニティ・バスを利用するつもりだったが、後述するような事情で予定が狂い、タクシーを呼ぶことになった。(以下、地図の下につづく)


■本日の宿は、山形県飽海郡遊佐町の海岸線にある湯ノ田温泉ののとや旅館。鳥海ブルーラインを下り、海岸線をしばらく北上し、釜磯海水浴場を過ぎたところにある。旅館は、のとや旅館と酒田屋旅館の2軒。

16:00過ぎにのとや旅館に到着。部屋でひと息つき、おかみさんと少し話をしたり、宿を見てまわって事情がのみこめてきた。といっても、はっきり確かめたわけではないので、これはあくまで推測である。

宿で働いている人たちのなかには、東日本大震災で家族が被災した人もいて、帰郷するなど一時的に人手不足におちいっていた。その結果、筆者が予約を入れたときに対応した人は、コミュニティ・バスのことなど、よくわかっていなかった。

吹浦口のコミュニティ・バスは、地域振興のために山と旅館を結ぶもので、旅館と深く関わっているはずなのだが、その連携がうまくいかなかったためにそれを利用できなかったというわけだ。タクシーの運転手の人も事情を察して同情してくれた。宿のおかみさんも、大平山荘の駐車場から電話したときのやりとりで、事情を察し、タクシーが着いたときに筆者が腰を痛めていると知ると、重いザックを運び、非常に気を使ってくださった。

さらにこれも推測まじりの話になるが、このお盆の時期、宿の板前さんも、おそらくは大震災が原因で帰郷していて、名物の岩ガキなども出せない状況になっていた。他のお客さんの様子を見ると、どうもそういう事情をあらかじめ説明し、それでもかまわないという常連さんだけを受け入れいていたようなのだが、われわれは事情を知らずに紛れ込んでしまったらしい。

それでも前日泊まったのが山頂の御室参籠所だけに、できるかぎりのもので用意していただいた夕食、朝食はおいしかった。山菜などはおかみさんが鳥海山の麓にとりにいくのだそうだ。おかみさんも、よほど申し訳ないと思ったようで、翌日はわれわれを車でわざわざ酒田駅まで送ってくださった。

宿の建物はそうとう年季が入っているが、筆者は嫌いではない。ロビーも客間も目の前に日本海が見えて、ひなびた雰囲気がたまらない。お風呂もだいぶ老朽化しているが、湯ノ台口と吹浦口コースを歩いてきたあとでは極楽であり、思い切りくつろげた。

そして、部屋から見られる日本海に沈む夕陽がとても美しかった(↑トップの写真をご覧ください)。明日は酒田に戻り、土門拳記念館と即身仏が安置された海向寺を訪れる予定だ。

鳥海山に登る その六につづく)

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