2011年5月1日(日):曇りときどき雨:横浜→東京→北上→花巻→花巻温泉→釜淵の滝→羽山神社
■GW前はなにかと忙しく、旅の計画をたてる時間がなかった。連休の前日になって温泉に行くことに決め、勘と好みで岩手と宮城の温泉を選び、宿を予約した。2泊3日の湯めぐりの旅だ。
5:09発の電車で東京駅に行き、駅弁を買って6:12発のやまびこ251号に乗り込む。北上まではだいたい3時間半。前日あまり寝ていなかったので、弁当をたいらげてからしばらくうとうとする。郡山を過ぎたあたりから桜が目立ちはじめる。今日の天気は下り坂の予報だが、まだ雨は降っていない。
9:41北上駅に到着。今回は山歩きではないので、なにも計画を立てていない。とりあえず駅の外に出てみるが、郊外的な風景しかないので、10:11発の東北本線・盛岡行きに乗り換え、花巻駅に向かう。
10:21花巻駅に到着。ここからは宮沢賢治の詩碑や記念館を訪ねるという手もあるが、バスの時刻表をチェックして、花巻温泉まで行き、そこから宿のある台温泉まで歩くことに決めた。
花巻温泉は、規模が大きなホテルや高級な旅館が立ち並ぶ一大リゾート地で、お隣の台温泉は、こじんまりとした旅館や自炊ができる湯治宿が並ぶひなびた温泉街。対照的な温泉を眺めてみるのも悪くない。
11:15発のバスに乗り込み、20分ほどで花巻温泉に到着。温泉入口には桜並木があり、ちょうど見ごろを迎えていた。忙しかったこともあり地元でゆっくり花見ができなかったので、あらためて春の風情を味わう。
桜並木から散策路の案内に従って、釜淵の滝に向かう。ホテルの駐車場はだいぶ車で埋まっているが、散策路を進むと誰もいなくなる。木立のあいだから台川を見下ろすことができる。途中に「熊にご注意!」の立て札が。通行するときには鐘を鳴らすことになっているらしい。いちおう鳴らしておく。
ジグザグの道を川辺まで下り、川沿いの道を進み、橋を渡ると右手に釜淵の滝が見えてくる。幅30メートル、落差は8.5メートル、丸く盛り上がった川床を水がすだれのように流れる美しい滝だ。滝の前には滝見台や東屋が設置されている。到着したときはちょうど無人で、ゆっくり静かに滝を眺めることができた。ここは宮沢賢治ゆかりの地であり、国指定名勝「イーハトーブの風景地」のひとつになっている。
展望所に設置された滝の説明版には以下のように書かれている。
「「釜淵」という名は、深く大きな滝壷の形からついたという説、あるいは岩盤が釜を伏せたような形をしているところから名づけられたとも言われている。台川の清らかな水が、玉すだれをかけたように数条に分かれ流れ落ちる様は、古くから人々に親しまれ、宮沢賢治も「釜淵」だら俺ぁ前になんぼがへりも見だ。それでも今日も来た。」と、作品「台川」に記している。」
もっと釜淵の滝の画像をご覧になりたい方は以下のリンクから「釜淵の滝:ギャラリー」にいけます。
滝から川沿いの道まで戻り、そのまま川下へと歩き、橋を渡ってその先の階段を登っていくと国道123号線に出る。道の向こうの藪から水音がするので渡って近づいてみると、違う沢に属するもう一本の滝があった。あとで調べてみたら、尾ヶ瀬滝というらしい。正面には回りこまず、木々の間から眺めるだけで、先に進むことに(地図によれば、その近くに滝不動尊もあるようだ)。
国道を台温泉方向に歩いていくと、右手に羽山神社がある。車で乗りつけ、たくさんのペットボトルに水をためている人がいる。境内から湧き出ている御神水は「羽山霊水」と呼ばれ、周辺の旅館でも飲料や料理の仕込みに使っているらしい。ただし、水量が豊富というわけではないので、ためるのにはそれなりに時間がかかるようだ。
この神社、説明版を読むといろいろ気になってくる。まず、花巻市指定無形民俗文化財となっている「羽山神楽」。その説明版には以下のような記述がある。
「羽山神楽は、羽山神社の祭祀神楽として伝承されてきた。度重なる火災により神社の勧請由来や「秘伝許可控」をはじめとする神楽の伝承記録は失われているが、その芸態から見て早池峰・岳神楽の流れを汲むもので、勇壮華麗な舞を特徴とする」
筆者は、早池峰・岳神楽を実際に生で見たことはないが、数年前に早池峰山に登り、下山して岳の集落に泊まったときに、神楽の資料館のような場所を訪れ、そこで流されていた神楽のビデオを見て、独特のリズムや舞に引き込まれた。その流れを汲む神楽には非常に興味をそそられるものがある。
境内に建つ神楽殿を眺めながら、実際に見てみたいと思う。説明版によれば、上演期日は、「羽山神社の祭礼日、春祈祷、地域の祝事、各種芸能大会 等」とのこと。
参考のためにYouTubeにあった「早池峰岳神楽」と「羽山神楽」を並べてみた。
もうひとつ興味をそそられたのが、神社の由来の説明版にある以下の件。「また羽黒山修験の流れをくみ荒沢薬師如来を併祀衆生の病患を救い、無明の疾病を癒すといわれ遠近の人々に篤く崇敬せられた」
境内の石碑群は羽黒山修験と関係があるようにも見える。
羽山神社を後にして再び国道を台温泉方向に進む。道路わきにぽつんと1本だけ桜が咲いていた。
(GW東北・温泉めぐり その二につづく)